トヨタの公式HPでラインナップを見てみると、アルファード/ヴェルファイア、ノア/ヴォクシーなど兄弟車が複数あるミニバンが8車種。セダンもセンチュリーやMIRAIを含んで8車種。それらを抑えてSUVは堂々の9車種を揃える。C-HR、ハイラックス、ハリアー、ヤリスクロス、ライズ、RAV4、RAV4PHV、ランドクルーザー、ランドクルーザー・プラドの9車種に加えて新たにカローラクロスが年内に仲間入りするらしい。使われているシャシーもTNGA-C、TNGA-D、TNGA-B、DNGA-B、ラダーフレームと多岐にわたっている。
どのモデルも良さそう・・・
本体168万円〜のライズから、510万円のランドクルーザーまで価格帯も幅広いのだけど、さすがはトヨタと言うべきかどのモデルも価格以上の価値を感じさせてくれる。週末のショッピングセンターの駐車場では、真新しくてカラフルなライズがトコトコとSUVらしく走っているのを見かける。360°どこから見てもまとまったスタイリングは、失礼ながらトヨタ車離れしている。通常のトヨタ車はいくつかの角度からみると非常に間延びした印象を受ける。C-HR、ハイラックス、ハリアー、ヤリスクロス、RAV4、ランクルプラドなどどれも例外なく「ブサイク」な角度がある。9車種の中に1台だけダイハツ車があって良かった。
SUVを選ぶ意味
昔ながらのクルマ好きなオッサンは、SUVブームを「軽薄なクルマ文化」だと感じているようだ。昔ながらの軽快でカッ飛ぶように走るクルマとは真逆の存在であるので仕方がない。個人的にはSUVは「ブーム」ではなくて、「ニーズ」だと思っている。富士山の5合目まで舗装されていて、乗鞍岳では2700m地点までバスが入っていける(マイカーは規制)。莫大な観光資源を備えている地域ならば道路インフラは維持されるだろうけど、そうではない地域の道路を維持する地方自治体では「クルマでお越しの際は、地上高に余裕があるSUVタイプを推奨します」と案内されていたりする(山梨県/長野県お大弛峠など)。日本は国土の8割近くが山地である。
SUVは重要なインフラだ!!
さらに近年では大雪や大雨が起こりやすくなっている。年間降水量が1700mm程度(高知市2500mm、長野市900mmなど差はある)であるのに、降り始めからの雨量が100mmを超えることもしばしばある。東京都市部でも10cm以上の積雪が起こり、前後のクルマがSUVの中で自分だけスポーツカーに乗っていれば、轍の間の除雪走行して進まざるを得ない。道路の舗装更新がなかなかできない道路では、アスファルトの轍がかなり深くなっているのをしばしば見かける。もちろんどんなタイプのクルマであっても、回避不能なレベルの災害に遭遇することもあるだろうけど、ごくごく身の回りに起きている路面の悪化からくるリスクを回避するためにSUVを選んでいる人はかなり多いと思う。トヨタも社会インフラとしてのSUVの重要性を認識しているからこそラインナップを増やしていると思ったのだが・・・。
ランドクルーザー 225mm
ランドクルーザープラド 220mm
ハイラックス 215mm
RAV4PHEV 195mm(G)、200mm(ブラックトーン)
RAV4 190mm(HV)、195mm(X、G)、200mm(アドベンチャー、Z)
ハリアー 190mm(HV)、195mm(ガソリン)
ライズ 185mm
ヤリスクロス 170mm
C-HR 140mm、155mm(GRスポーツ以外のAWD)
となっている。C-HRだけ極端に低いのが気になる。これは新型アクアと同じ数値だ。ちなみにベース車のプリウスやカローラは130mmとなっている。何が言いたいかというと、トヨタはC-HRはSUVに区分して販売しているけども、設計上は非SUVモデルと同じ特徴が見られる。SUVの機能性を求める人に「誤認」を与える可能性はないのか!?何か不都合は生じないか!?という点だ。おそらく世界で一番に親切丁寧なトヨタのディーラーであるから、C-HRを希望する顧客に対して契約前に十分な説明をしているとは思うが・・・。
ちなみに他社SUVの最低地上高は・・・
CX-5 210mm
CX-8 200mm
CX-30 175mm
CX-3 160mm
フォレスター 220mm
アウトバック 213mm
XV 200mm
RVR 195mm(M)、205mm(G、ブラック)
アウトランダー 190mm
デリカD5 185mm
エクリプスクロス 175mm(ガソリン)、185mm(PHEV)
エクストレイル 200mm(HV、ガソリンS)、205mm(ガソリンXi)
キックス 170mm
CR-V 190mm(HV・2WD)、200mm(HV・AWD、ガソリン2WD)、210mm(ガソリンAWD)
ヴェゼル 170mm、180mm、185mm、195mm
ジムニーシエラ 210mm
エスクード 185mm
クロスビー 180mm
良質なSUVを作るメーカー
ずらずらと書いてしまったが、トヨタラインナップの中ではライズの設計がかなりまともに見える。そしてトヨタ以外のメーカーを見てみると、スバルは全車200mmを超えており、SUV設計に高いポリシーを感じる。そしてライズ(ロッキー)と同等の車格を持つエスクードも同じく185mmだ。後から作られたのはライズなので、スズキの本格的なSUV設計がダイハツを通じてトヨタラインナップに加わった格好だ。クロスビーでも180mm確保されているし、ジムニーシエラはさすがの数値。
偽SUV問題
C-HRと肩を並べるような無茶な「偽SUV」はいないけども、MAZDAや三菱の一部のSUVもSUVとしてやや疑問符が付く。スバルやスズキと比べてしまうと堅実なブランドイメージを毀損しかねない状況だ。しかしそんなこと気にするユーザーはそれほど多いわけではなく、某大手輸入車ブランドのSUVモデルのカタログを見ても「最低地上高」の記載もなければ、AWDの設定もない。まあランドローバーやメルセデスGクラスなど見るからに高いモデルなら何の問題もないし、当然にAWDが設定されていて・・・雨が多い日本でAWDは重宝する。AWDならば何もかも安心というわけではない。当然ながら泥濘や雪道では、空転するタイヤにトルクが流れてしまう設計なので、AWDゆえに「マッドモード」「スノーモード」を使いこなす必要がある。自宅駐車場は未舗装なので雨が降ると「マッドモード」を使うことがしばしば・・・。
さて「告発」とタイトルを付けさせてもらったけども、C-HRに関する啓発が目的だった。このクルマは別格にひどいけども、他にも「SUVとしては買ってはいけないクルマ」はいくつもある。Bセグのライズ185mmよりも最低地上高が確保できていないモデルは注意が必要だ。C-HR以外に、ヤリスクロス、CX-30、CX-3、エクリプスクロス、キックス、ヴェゼル、クロスビー。逆に全グレードで200mm以上の最低地上高が確保されていて推奨できるSUVは、ランクル、プラド、ハイラックス、RAV4PHEV、CX-5、CX-8、フォレスター、アウトランダー、XV、エクストレイル、ジムニーシエラの11車種。グレードによって地上高が変わるモデルもかなり多く。概ねグレードが上がると余裕ある設計が取られているようだ。トヨタは本体価格が400万円前後以上のモデルのみってのがシビアな現実。ジムニーシエラとXVが車両価格を考えると特にオススメできそう。