マウンテン・ゴリラのカーライフ

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ガチスポとコモディティの間・その2・BMW2シリーズクーペ

 

技術の使い所

日本メーカーの新型モデルが、SUVもしくは高級化されたピープルムーバー(ミニバン)ばかりになって久しい。ほとんどのクルマで居住性と快適装備が開発の目玉になっていて、結果として車重はどんどん増えるし、車高も重心も高くなっている。踏ん張るため大径で幅広になったタイヤでは、ハンドリングの良さなんて追求する余裕はない。高重心の箱車をスリップさせずに加速させ、無難に制動させるというだけでも、メーカーの高い技術力はわかるけども、いつしかクルマの進化の方向性は変わってしまった。

 

 

SUV嫌い」がいつまでもいなくならない理由はわかる。90年代から2000年代にかけて日本メーカーが競って磨き上げてきた「走る、曲がる、止まる」の基本性能の進化です世界に広く認められるようになったが、SUVの誕生はその流れを完全にぶった斬る存在だからだろう。スカイライン、アコード、アルテッツァなどがクルマの理想を突き進んでいく姿は、クルマ好きにとって非常にわかりやすいものだった。高価なドイツ車を買わなくても、日本メーカーのフラッグシップ車で互換性能プラスアルファの走りをするようになったから。

 

 

 

プレミア中古車市場

2000年頃のM&A業界再編の動きと、2010年頃のリーマンショック後の急激な経営転換によって、トヨタ、ホンダ、日産、MAZDA、スバル、三菱といったドイツ車に比肩するクルマを作る日本メーカーは、まるで以前とは別の会社になったようだ。開発&生産が止まってしまい、NSX、スカG、シビックR、RX7、インプレッサWRXランエボ、シルビア、スープラ、チェイサー(MT車)といった過去の名車は、中古車市場でフェラーリやポルシェ並みの価格を付けている。25年前のNSX、スカG、スープラが800万円って・・・。

 

これだけの中古車相場なのだから、90年代2000年代に立ち返ったようなスポーティなモデルを作れば良さそうだ。しかしトヨタや日産はFRシャシーへの投資に否定的であり、ホンダもかつてのようなスポーティな足回りは使わなくなってしまった。MAZDAもFRシャシーこそ作ってみたもののSUV専用設計にしたとのこと。三菱はSUV、小型車、ピープルムーバー以外はとっくに開発を止めている。レヴォーグ、S4、BRZを揃えるツアラーに強いスバルだけど、価格が主軸の北米市場に引っ張られ気味なのか、いずれも乗り出しは500万円くらいだ。

 

 

 

中古ドイツ車はどうなのか!?

これだけの価格上昇マインドを見せられて、さすがに「200万円くらいの手頃でスポーティな車を作ってくれ!!」という人もあまり見られなくなった。前回の投稿で書いたスイフト・スポーツだけがこのカテゴリーに留まってはいるけども、自動車ユーザーも現実を受け入れつつある。諦めて中古車市場で200万円くらいの適当なプライベートカー(セカンドかー)を探してみると、2016年製くらいのBMW2シリーズクーペがちょうど良い感じだ。ちょっと前までは「8年落ちのドイツ車」なんて二束三文だと思っていたが、今では興味を持って探す人も増えているのではないか。

 

ドイツ車の中古車市場が暴落気味な理由として、言うまでもなく「故障リスク」と「「デザインの劣化」の2つが挙げられる。日本車でもそこそこ故障は起こるのだけど、ドイツ車の場合はその際の部品代金が桁違いに高いという問題もある。しかし今では日本メーカーも高性能なクルマではかなりの修理代が請求されるし、ごくごく平均的な普通車であってもメンテパックや車検をディーラーに丸投げすると、2年に1度20万円くらいかかるようになった。ドイツ車だからクルマにかかる費用が高い・・・というわけでもない。

 

 

ボトムグレード

デザインや内外装も経年と共に見劣りするようになる。劣化に関しては日本メーカー車でも同じことが言えるが、ドイツ車の場合は「高級車」目線なバイアスがかかって、劣化による満足度の低下幅が大きい。安物と高価なものどちらの傷がショックだろか!? 周囲からも注目を集めやすいドイツ車は、「型落ち感」が拭えないエクステリアだと、それが完全に裏目に出てしまう。この2つの「禁忌」すべき理由があって、いくら割安でもまともなユーザーは手を出さない。金持ってないけど見栄を張りたい中高年(=AJAJライター!?)が買うクルマになってしまっている。

 

ボデーサイズが小さいために、割と成金趣味な人々から見向きもされないのがBMW2シリーズクーペだ。BMWヒエラルキーではクーペとしては最下層に位置する。4シリーズ、8シリーズが上に用意されている。それだけで2シリーズクーペに抵抗を感じてしまう人も多い。そんなヒエラルキービジネスでテンション下げたくない人は、現実的な価格でフラッグシップが買えるMAZDAやスバルを選べばいい。しかし逆ヒエラルキーで脱「高級車」化した2シリーズクーペだとなんだか経年劣化も愛せるという理屈も成り立つ。

 

 

 

ヒエラルキー終焉

一般人ではとても登れないヒエラルキーを築いて、世界のプレミアム市場を実効支配していたはずのメルセデスBMWアウディ、レクサスが、あっという間にテスラに抜き去られた。伝統と格式による超えられない壁がガラガラと崩れた。現状は自動車産業にとって先が見えない闇かもしれないが、EVシフトは価値ある「変化」を生み出したと信じたい。ヒエラルキー神話が形骸化した今なら気兼ねなく手頃な価格の2シリーズクーペを楽しめそうだ。

 

ちょっと調べたところ、2Lガソリンターボのベースモデルだと179万円〜、3Lガソリンターボのモデルだと250万円〜、M2も400万円〜と現実的な価格だ。さらにツインターボのS55エンジンが搭載されたM2コンペティションも470万円〜であり、この価格で400ps超の日産スカイライン400RやフェアレディZを上回るユニットがついてくるのだから、スーパースポーツへの憧れを叶える近道かもしれない。ベースグレードでも184psで車重は1530kgだから、かなり軽快なグランドツアラーな走りができる。

 

 

セダンの構造的欠陥

日本市場ではマークX、カムリ、MAZDA6などの4ドア4シーターのツアラーが次々と消えていった。これらのセダンの悲しい現実だけど、最新の軽自動車よりも圧迫感がある後席シートに誰が好んで座るだろうか!?高速道路を走ってもトラックの足回りや外壁を延々と見ているしかない。かつては後席のためのクルマであったはずだが・・・。北米でも欧州でも販売できるグローバルモデルとして「Cセグ」と「DEセグ」の2サイズがあるけども、「DEセグ」に関しては上記のセダン不調の理由もあってSUVが完全に優位になっている。

 

「Cセグ」に関しても、長年の定番車であったVWゴルフやルノー・メガーヌの存在感が、本場の欧州でも低下していて、従来のCセグハッチバックというパッケージでは売りにくくなっている。すでにほとんどのメーカーがCセグSUVを定番車として市場投入しているけども、ハッチバックから派生した「スペシャルティ」あるいは「スーパースポーツ・テック」で商品価値を底上げした非SUVなCセグが市場でしぶとく生き残っている。10年くらい前にメルセデスがCLAというCセグ4ドアクーペを発売しスマッシュヒットさせてから、各メーカーから登場し始めた。

 

 

 

時代は繰り返す!?

BMWも横置きエンジンの2シリーズグランクーペを発売し、2代目となったGR86もグランドツアラーとしての進化を果たした。アルピーヌA110、MAZDA3、プリウスと話題のクルマが続き、今度はホンダがプレリュードを復活させるらしい。VWゴルフも高性能版の「GTI」や「R」はせっせと日本に正規輸入されている。SUV化に抵抗するドライビングカー市場の最後の砦は、どうやらBMW2シリーズクーペの界隈ってことになりそうだ。

 

BMW史上で最大のヒット作となったE46系BMW3シリーズ(1998〜2007年)は全長が4500mm程度だった。それから20年余りが経過し、自動車を取り巻く環境もガラリと変わってしまったが、手探りな自動車メーカー各社は、無意識だか直感的だかわからないけど信頼できる「クルマの黄金律」に回帰しているように思う。ごくごく個人的な感想ではあるが、SUVユーザーが急激に増えてきたことで、黄金律なドライビングカーを恋しく思う世論も確実に高まっているように思う。

 

 

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