マウンテン・ゴリラのカーライフ

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BRZ <2022年全米No.1ブランド・SUBARUの実力>

 

アメ車の変遷

 

新型のアメリカ車はなかなか日本の道路ではあまり見れなくなった。シボレー、ダッジ、キャデラックなどの20年くらい前のモデルは日本市場でもいくらか流通していたので、その世代のモデルをたまに見かけるくらいだ。所沢(埼玉県)や八王子(東京都)の近郊には並行輸入業車がいくつもあって、左ハンドルのチャレンジャー、デュランゴ、シルバラードなどを見かけることはある。あまり「アメ車」という意識はないけどもJEEP、TESLAそしてSUBARUなどが今のアメリカ市場を象徴する存在になったというのもあるかもしれない。

 

日本市場向けのSUBARU車は群馬県で生産されているけども、スバルは2022年の北米ブランドランキングで堂々の1位だった。アメリカ人が最高のブランドに選び、スバルも8割以上を北米で売るブランドなのだから、もう「アメ車のブランド」とカテゴライズしてもいいかもしれない。日本向けのJEEPはメキシコで、TESLAは中国で作られているのだから生産地はもはやあまり関係ない。群馬県は広大な近代的農園が広がり、高速道路が張り巡らされ、機械工場と巨大な倉庫がいくつも並び立つ。その佇まいは日本の枠をはみ出し「アメリカ」に近い。

 

 

日本で作るアメ車

 

現行の2代目BRZも、2.4L自然吸気エンジンを搭載しているというだけで、もはや日本車の範疇の外に位置している。この排気量の自然吸気エンジンは日本メーカー車となるとアルファードなどの車重が規格外なミニバンだけが例外的に使うことを許される。MAZDAは北米向けユニットを日本でもそのまま売ってるけどこれも例外。中型以上のセダンやSUVはHV設定が当たり前。もしくは日本の自動車税を考慮して排気量は2L未満に抑える。2LのNAでは一般的な150〜170psのスペックでも軽快に走れて快適なキャビン空間を持つ自動車を、世界では「日本車」と呼ぶ。

 

11.7km/Lのモード燃費も明らかに日本市場を無視した暴挙だ。車重が1270kgしかないクルマなのだから、もう少しどうにでもなりそうだけど、モード燃費は低ければ低いほど「日本車とは遠い存在」という立ち位置がスポーツカーとしての価値を高めるのかもしれない。標準的な車重(1300〜1700kg)でモード燃費が15km/Lを大きく割り込む現行モデルのクルマは、走らせる分には例外なく楽しい。しかしそんな海外向けの「走りの喜び」より、国内市場の多くのユーザーの価値観を優先し、CVTを使って燃費を取りに行くのが「日本車」の流儀だ。

 

 

 

歴史的な設計

 

スバルもBRZ以外のモデルはCVTが採用されている。トヨタグループになって10年以上が経過するが、使っているのはトヨタアイシンAWの因縁のライバル・ジャトコと共同開発した歴史を持つ自社製「リニアトロニック」だ。300ps級の高出力エンジンともマッチングできる堅牢なCVTである。「電気自動車(BEV)の加速はヤバい」とか騒いでる連中は、CVTWRXを経験したことがないのだろう。20年くらい前のスカイラインにもジャトコ系のCVT車があった。

 

スバルのシャシーアイシンAWのトルコンATが搭載されたという意味でマニアックなクルマになっているのがBRZだ。アイシンAWの「TB-65SN」という縦置き6速トルコンATは、マークXに使われていたもので、世界No.1の小型軽量なトルコンとして知られる。ちなみにプラドの6速とは別のものだ。現在使われているのはBRZ、86とMAZDAロードスターくらいで、スバルとMAZDAシャシーにのみ搭載されているようだ。

 

 

バブリーなエンジン

 

レクサスの縦置きに使われる8速ATは、このスバル&MAZDA向け6速ATに比べ5%の燃費改善になっているらしい。BRZロードスターも車重の割に燃費があまり良くないのは、高回転型エンジンだけでなくミッションにも原因があるようだ。さらにクルマ好きなら誰もが知っていることだけど、スバルの水平対抗エンジンは燃費を考慮していない。日本メーカーがイケイケでスポーツクーペを競って作っていた1988年に登場したエンジンが2020年まで主力エンジンとして活躍した。

 

バブル崩壊後に、不振に陥った富士重工の自動車部門スバルは、GM、日産、トヨタの傘下で生き延びてきた。主体的にエンジン開発をする余裕はなかったようだ。2010年にトヨタ傘下でFBエンジンが登場する。初代86&BRZに搭載されるFAエンジンと同時開発だったようで、開発費にはトヨタからの軍資金が流れ込んでいる。トヨタからはスポーツカー向けの高回転型エンジンが発注されているのだから、2Lから2.4LにボアアップしたFAエンジンは自然吸気で86&BRZ、ターボ版でレヴォーグ、WRXに使われる。

 

 

 

エンジンからクルマが生まれる

 

スバルのフラッグシップに位置するレガシィアウトバックは、北米&オセアニア向けには2.4Lターボ、2.5L自然吸気(FB)が用意されるが、日本向けは1.8Lターボの新しく開発されたCB型エンジンのみが導入されている。日本市場においては2.4LターボのFAエンジンでは、他社と比べてまともなモード燃費が出せない。裏を返せばトヨタの意向を受けたパフォーマンス重視のFAエンジンありきでスポーツタイプのモデルをあれこれ設計する方針は、他のどの量販車メーカーよりも熱いものがある。

 

「クルマはエンジンだろ!!」だった時代が懐かしい。今ではほとんどのメーカーでエンジンでは駆動させない選択がセオリーになってきた。レンジエクステンダー・ロータリーって何だよ。PHEVが万能な高性能車向けユニットと理解している人もいるみたいだけど、自動車行政に振り回されて充電プラグがないと数年後には不利になる可能性があるから付けているに過ぎない。そんなものに開発コストが奪われて車両価格も上がる。EVシフトの一番意味不明な部分だ。

 

 

クルマ人気を回復させた

 

日本では「スバルは燃費が悪い」「CVTばっかり」などなどメーカーの事情などお構いなしの批判が出てくる。「燃費が良くてCVTじゃないメーカーってどこ?」なわけで、燃費に文句があるならトヨタを、CVTが嫌ならドイツ車かMAZDAを買えばいい。そんなスバルにFAエンジンを作るよう指示し、CVTじゃないミッションをスバルシャシーに使わせたという意味でトヨタの86プロジェクトは素晴らしいと思う。

 

スバルと同じく水平対抗エンジンを使ったスポーツカーを作り続けるポルシェを、VWグループが支援して、ドイツ車の価値を世界に示す唯一無二のブランドとなっている。スバルとトヨタの関係も、もっとドラマティックにカーメディアで語られてもいいんじゃないだろうか。86とBRZは初代からブランドのアイデンティティが不明確などの批判があったけども、86&BRZが無ければ、クルマなんて買わないという人も結構多いと思う。

 

 

最後の希望

 

新型インプレッサはFB20エンジンを持ち越してFFを設定して229万円という低価格で設定してきた。フォレスターアウトバックに使うCB18エンジン(1.8Lターボ)は、中型以上のSUVの為には必須のユニット。そして走りのスバルを存分に味わうためにFA24エンジンが自然吸気とターボで展開される。それぞれにニーズを意識した合理的な配置だと思う。スバルディーラーにはダイハツから供給されてた軽自動車やコンパクトBOXカーが用意されていて、スバル本体は「アメリカ」をターゲットにしたクルマの開発に邁進している。

 

合弁が義務付けられる中国市場にはスバルは事情があって参入できない。旧中島飛行機の合弁工場が中国に建ったら何が起こるかわかったもんじゃない(三菱も同じ)。その代わりに自動車のメージャーリーグである北米で目一杯の躍進を遂げている。日本の自動車行政が変わろうがどうってことはないけど、アメリカでエンジン車が作れなくなったらスバルも廃業を覚悟しているだろう。刹那の輝きを見せるスバルは実に応援したくなるメーカーである。