両極端な2台
2020年製のCX-5 (2.5Lガソリン) と、2025年製MAZDA2 (15MB)を、毎月500kmくらいを目安に使い分けている。林道から高速道路まで道路を選ばずガンガン走れるCX-5に対して、比較的に短距離でダイレクトでフラットなドライブにMAZDA2を使っている。MAZDA2の方がサイズも小さいので、抜け道の選択肢は多くなるのだが、そもそも15MBにはカーナビが無いので、土地勘がないところで迂回などは安易にできない。
どちらもMAZDAの「超」が付くくらいの名車なので、期待しているカーライフを想像以上にハッピーなものにしてくれている。MAZDA2のコクピットはスポーツカーのようにタイトで、乗り降りする時に、ハンドルに膝が当たるに窮屈だ。しかしこの「狭さ」がMTドライブに集中するのに合っている。CX-5とはドライビングポジションがかなり違っていて、クラッチのストローク加減が十分にわかるように、ペダルとの距離を近くしている。
偏見かもしれないが・・・
現行のMAZDA2はガソリンもディーゼルも試乗車でAT車に乗っているが、どちらも「長く乗っていたい」という感情は起こらなかった。正直言ってATだとMAZDA車らしからぬ「オモチャ」っぽい走りになってしまう。同クラスのCVTを装備する他社モデルと比べれば、走りの質感は十分にアピールできるのだろうけど、やはりMAZDA2の乗り味を堪能するには、MTのダイレクト感が不可欠だと思う。
ATのMAZDA2に試乗していて気になった。2ペダルのコンパクトだと、あまりに運転がイージー過ぎて、手持ち無沙汰になってしまう。同じく代車で乗ったガソリン1.5L&6ATのMAZDA3だと、1.5Lエンジンの割によく走り、静粛性も高く、ずっと運転していたいという気持ちが高まった。しかし同等のスペックのMAZDA2は軽量でより走行性能が高いはずだが、車体が跳ねてしまうのだろうか、どこか落ち着きがない乗り味になる。
MTの隠れた存在意義
Bセグの良さ、Cセグの良さは、クルマ好きとして一応わきまえているつもりだ。ラリーベースやスーパー耐久でも使われるMAZDA2に対して、CセグハッチバックなのにTCR向けグレードを作らないMAZDA3では、クルマの方向性もかなり違うように感じる。同じ1.5L自然吸気を搭載でも、MAZDA2はMTで、MAZDA3はATで乗りたい。スポーツカー気分で運転に集中するMTと、くつろぎながらドライブできるATでは、楽しめるコクピットのサイズも異なる。
MTは百難を隠す。シフト、クラッチ、アクセル、ブレーキのタイミングや、コンディション (路面、斜度など) の違いによってあらゆる乗り味が出てくる。下手くそな時もあれば、思いの外に良い乗り心地の時もある。2ペダルだとクルマの基本性能がそのまま乗り味となって現れるけども、MT車だと運転が下手でクルマが持っているポテンシャルを引き出せていないだけで、クルマは悪くないと考えるバイアスが働く。
CX-5は実によくできている
MAZDA2に乗るようになって4ヶ月が経過した。月500kmペースで2200kmほど走ったが、同じ期間にCX-5も2000km走った。MAZDA2だとエンジン音に追い立てられるようにシフトアップするが、CX-5 (2.5LガソリンNA) だと、終始エンジン音など気にせずに走っている。ボデーサイズが違う上に、SUVで着座位置も高いので、エンジンとの距離も稼ぐるだろうし、何より防音・消音のレベルがMAZDA2とは段違いだ。エンジン始動後のアイドリング音も全然違う。
1.5Lと2.5Lで排気量の違いがアイドリング音にも影響があるかもしれないが、1.5LのMAZDA3もアイドリング音はかなり静かだった。防音・消音に関しては、第五世代のMAZDA2、第六世代のCX-5、第七世代のMAZDA3と、開発年代の違いによる差が大きいと思われる。実家のカローラツーリングはMAZDA2以上に安っぽいエンジン始動音がするが、購入時にHEV版も試乗していて、こちらは静粛性が高かった。
ブレーキと空調
CX-5は、エンジン音だけでなく、ブレーキタッチも優れている。MAZDA2の制動に大きな問題はないのだけど、最後の完全停止するところで、車体がややカックンとなる。どんなに余裕を持って丁寧に止めても最後にショックが伝わってくる。CX-5ではよほど荒い止め方をしない限りは起こらない現象だ。MTのMAZDA2では、停止直前にニュートラルにしているので、エンブレが効かない状態でフットブレーキだけで停止させる故にショックが発生すると思われる。
静粛性が高く、繊細な停止が可能なブレーキが装備されるだけでなく、今年の暑い夏に顕著に感じたが、エアコンの効きがCX-5の方が圧倒的に良い。15MBはMAZDA2の低グレード用のマニュアルエアコンで、乗り込んですぐに風量&冷房をMAXにしたことはないので、本気を出せば冷えるのかもしれない。最小限の風量&冷房の状態でも、ステアリング近くの吹き出し口から、風が手の甲に当たり手だけ冷たくてちょっと気になってしまう。それに対してCX-5は車内全体が快適に冷える。
MAZDAの作り込み
エンジン音の遮音だけでなく、床下からの騒音もCX-5はうまく押さえ込んでいる。MAZDA2で奥多摩周遊道路を走っていたときに、沿道で夏草の伐採が行われていて、路面に細かく粉砕された植物だったり砂があったようで、タイヤが盛大にそれらを巻き上げて、タイヤハウス付近からカラカラと反響音が鳴り響いた。CX-5ではまず聞いたことがないような音だったので「なんじゃこれは!?」と驚いた。
MAZDA2納車時には、アイドリング音、ドアの開閉音などクルマの質感がすぐに見えてしまう部分に関して、実家のカローラツーリングよりよくできていると感心するくらいだった。しかしCX-5は、そんな出来の良いMAZDA2のはるかに上を行っている。MAZDAが高級車クオリティを意識してSUVを定義したことで、世界で爆発的に売れたことは知っているが、5年ほど乗っていて「これくらい当たり前」だと思っていた。
MAZDAは生き残れる!!
家族や知人を乗せる機会もあるCX-5と、ほぼ1人で乗る用のMAZDA2なので、それぞれの用途に合った仕様になっている。不用意に騒音が入ってきたり、制動時に無用なショックが出たりしないCX-5は、複数人で乗っていても安心して長時間走ることができる。一方でMAZDA2は1人でドライビングに浸るので、空調や騒音を気にするほどリラックスして乗るクルマではない。MT車にはアームレストなど不要だ。
哲学とか宗教とか言われて、MAZDAのこだわりは「やり過ぎ」と笑われることもあるようだ。しかしCX-5とMAZDA2の徹底した作り分けの妙に気づいてしまうと、一流の自動車メーカーならば、MAZDAのようなこだわりを持つべきだと思う。納車を遅らせて価格を釣り上げて、残クレを組ませて、さぞかし良いクルマと思いきや・・・商用車と共通設計のピープルムーバーで走らないしうるさいなんてことも多いインチキ業界ゆえに、MAZDAの存在価値は果てしなく大きい。