ホンダのHEVの集大成
アメリカ市場が絶賛するベストセラーSUVなのに、ホンダが日本市場向けにはチグハグな販売方針を取っていたため、国内での知名度は残念ながら低い。2026年2月に日本市場に投入されるCR-Vのe:HEVだけど、もう少し早くできなかったのだろうか!?という思いある。ホンダのHEVの歴史は長く、1999年に初代インサイトを発売してからすでに四半世紀が経過している。その道のりは順調ではなく某大手メーカーが仕掛ける「情報戦」に翻弄され疲弊した部分も大きい。
初代プリウス(1997年)と、初代インサイトは量産車HEVの原点であり歴史的名車と記憶されている。客観的な指標で恐縮だが、どちらも絶望的にエクステリア・デザインが・・・・ダサい。見た目にうるさい某広島メーカーからしてみたら「どう間違えたらあのデザインで稟議が通るんだ!?」という話だ。メルセデス、BMW、アウディなど、少量多種生産が基本のプレミアム・ブランドの多数の歴代モデルでも、初代プリウス、初代インサイトに相当する黒歴史は見当たらない。
初期型HEVはダサかった・・・・
燃費は伸ばせるが乗り味がメチャクチャ不評だったトヨタのTHSと、乗り味を妥協せずMT車を作ることを前提としたホンダの初期HEVシステムのIMA(マイルドハイブリッド)では、真逆の方針を採用している。不幸なことにトヨタの強引なまでのダンピングと手段を選ばない情報戦略で、乗り味に優れていたホンダIMAは駆逐されてしまう。当時のカーメディアやクルマ好きはあまりに保守的(HEVに無関心)で、トヨタTHSこそがHEV技術だと理解され、「HEV=乗り味が悪い」という偏見が今も燻っている。
デザインの悪さで躓いたトヨタ、ホンダの初期HEVだけども、2010年前後に初代アクアとCR-Zが、反省を生かして優れたエクステリアで登場し、初期型THSとIMAの認知度も上がった。クルマ選びの基本は、「愛車がダサいのは絶対ダメ」ってことだ。価格と燃費に釣られて適当にクルマ選びをすれば、次第に近所のモールに買い物のために乗っていくのも億劫になる。2010年頃には大赤字で倒産が囁かれていた某広島メーカーにとって、「デザイン重視」のクルマ選びの到来は神の福音以外の何者でもなかった。
HEVの走りを変える
初代プリウス(10系)、二代目(20系)から、大きく設計が変わりTHS3が投入され、PHEVも追加された三代目(30系)はデザイン面で進化し大きく販売を伸ばした。しかしTHS3の走りはまだまだカーメディアや欧州市場では酷評の嵐だった。2014年にFMCで40系に移行する予定だったが、裏でトヨタを揺るがす大事件が起きていた。トヨタから旧型THS2を提供されていた某広島メーカーが2013年末にCセグでTHS2の改良車を発売。このクルマの乗り味の別次元の良さにトヨタ開発陣が度肝を抜かれ、販売計画が白紙になったらしい。
2014年のFMCは撤回され、2015年に4代目プリウスは「50系」として、新開発のTHS4を搭載して登場した(40系はお蔵入り)。この4代目は前衛的すぎるイタリアン・デザインが災いし販売面で苦戦したが、多くのカーメディアでは、プリウスの乗り味が「普通のクルマになった」と好意的な評価をした。乗り味の進化は圧倒的で、このTHS4はカローラ、ハリアー、RAV4、クラウン、レクサスLCなどトヨタグループの主幹ユニットとして広く採用された。
ホンダは正しい
トヨタのTHSを大きく進化させることになった某広島メーカーは、現行モデルでホンダのIMA(2013年移行のホンダ車では採用なし)に近いシステムのマイルドハイブリッドを、MTと組み合わせて日本市場でも販売している。ホンダがこのメーカーに対して「一緒にBEV専門グループで世界の頂点に立とう!!」と誘ったが、「ホンダが捨てたIMAの理想を我々は追求していくので、BEV専業は無理です」とそっけなく返答したとか・・・。
2027年には某広島メーカーは独自開発のストロングハイブリッドも登場すると予告されている。大方のファンの予想(期待)は、ブランドイメージに合わないTHS(2022年からTHS・5に進化)の導入ではなく、走りの理想とするホンダの骨を再び拾うべく、IMAから全面的に切り替えて、低速はBEV、中高速はエンジン直結で使い分けるe:HEVに近い仕様ではないかと思われる。この熱烈なリスペクトをホンダ側はしっかる受け止めているのだろうか!?
トヨタもホンダ方式を模索!?
とりあえず2026年の初頭は、トヨタTHS5のRAV4と、ホンダの最新鋭e:HEVを使ったCR-Vが競う。2025年のプレリュードvsプリウスに続く、HEV最前線での最高峰の戦いなのだから、ユーザー側もカーメディアもリスペクトを持って真摯に意見をぶつけるべきだと思う。ホンダがIMAを断念した理由は、おそらくSUVやステップワゴン、オデッセイなどの中型市場のミニバンへの採用が難しいからで、これは日本市場における総合自動車メーカーであるトヨタ、ホンダ、日産の3社に共通した事情である。
CR-Zの復活を望む声を振り切り、IMA(軽量MTあり)からe:HEV(重量級も可能)へ移行したホンダにとって、オデッセイとCR-Vをe:HEVで成功させるのは絶対に譲れない目標だ。時速60km/h以下ではモーターのみで走行し、幹線道路や高速道路ではエンジンで巡航する。個人的な考えで恐縮だがe:HEVは設計思想でTHSに先んじていると思う。エンジンとモーターの動力を混ぜて走る時間が長いTHS方式は、トルクとパワーがアンバランスに変化するため、欧州メーカーは採用を見送っている。ルノーもホンダ方式を採用している。トヨタも新型エンジンを発表していて、「ホンダ方式でHEV化する」肝心要の部分をボカしている。
e:HEVを絶賛する声
ちょっと前の報道だが、トヨタの会長が、ホンダ経営陣に対して「エンジン開発の継続」を要請したらしい。この会長はやはりサラリーマンではなくオーナーで、メディアの前で臆面もなく他社の技術を褒め称える。サラリーマンだらけのホンダの経営陣からしてみたら不気味で恐ろしい。研究開発費が世界トップのトヨタは、他社のクルマを徹底分析する伝統があるが、その中でe:HEVの優位性をトヨタが認めたのだろう。その上でホンダに対して「トヨタのためにe:HEVをもっと進化させてくれ」という下心は、ホンダ陣営に見透かされている。
今後、トヨタ、レクサスや他の日本メーカー、さらにBMW、アウディ、ポルシェなどの輸入ブランドにもホンダ式HEVが広まっていく道筋がなんとなく見える。CR-VはホンダにとってはHEV技術の終着点かもしれないが、ホンダがHEVを楽しく走らせるために四半世紀にわたって積み上げてきた技術は、世界の多くの自動車メーカーにとっては、楽しいクルマを作り続ける最後の希望かもしれない。同じような技術にスバルも挑んでいたが、多額の研究開発費をかけて赤字スレスレのホンダと、世界トップの10%超の利益率を誇り続けたスバルに大きな分岐点があったと言わざるを得ない。
使い方にワクワクできる
CR-V・e:HEVにはぜひ乗ってみたい。フォレスター、RAV4のTHS勢と差別化できる明確なアドバンテージは理解できるし、北米モデルを試乗しているプロライターが「圧倒的にレベルが高い」と記しているくらいだ。しかし総合自動車メーカーのホンダゆえに、クルマの仕上げが大雑把になる点があるかもしれない。多くの欧州車がそうであるように、右ハンドル車だと走りが変わってしまう可能性もある。
夜中に一人で4.8m級のSUVを気ままに乗り回したいという人は少数派だろう。後席にスライド機構やリクライニング機構があることが、CR-Vの魅力であることを考えると、オデッセイのSUV版としてファミリー・ユーザーの選択肢を広げるクルマである。それでも巨大な荷室空間にロードバイクを乗せたり、休憩時に後席でくつろげるグランドツアラーSUVとしてシングル層のニーズも期待できそうだ。ホンダのブランドイメージを変える一台になりそうな予感がする。
後記
最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年1月12日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 車メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。
ホンダ タイプR ヘリテージ
プレミアム HONDA S2000 TYPE S