マウンテン・ゴリラのカーライフ

最高に面白いクルマのブログを作りたい!!(もちろん全編フィクションです)

令和のドイツ車事情

 

 

夜の走り屋

ツール・ド・フランス2024がポガチャルの圧勝で終わったので、1ヶ月ぶりに夜間ドライブに行った。午後11時を過ぎた辺りの埼玉県所沢市周辺に張り巡らされたバイパス道路は、気持ち良いドライブには良い感じの交通量になっている。所沢を起点に国道463号線(所沢浦和バイパス)、国道254号バイパス、国道16号、県道126号と回ると、全区間が片側2車線の高規格一般道で走れる。

 

MAZDASUV(CX-5)でちょっとだけ出足鋭く走ってみると、周囲のドライブ好きの本能に火がついてしまうのか、後からゾロゾロと「らしい」クルマが追従してくる。東京都や埼玉県の周辺では「メルセデスA35AMG」とのエンカウント率が高くなっているように感じる。車重1400kgくらいのCセグでは圧倒的なスペックを持っているからか、かなり自信満々に追っかけてくる。300ps級の2Lターボで、さらにターボラグを抑えるために48Vモーターまで付いていて、MAZDAの自然吸気に遅れを取らないタイミングで加速できている。

 

 

マナーが良い

後続車がやってくると嫌がって目が覚めたようにスッ飛んで前方を開けてくれるのがドイツ車(ハイチューン)乗りの素晴らしいところだと思う。後ろのドライバーに絶対に迷惑をかけたくはないという崇高なポリシーが浸透している。ゴルフR、シロッコR、アウディRS3、ポルシェマカンなどのモデルならば、前が空いている夜間時間帯ならば、ほぼ100%突き放しにかかってくれるので、それらのクルマが前にいるレーンを選んでしまう。

 

同じドイツ車でもBMWとなると、最近ではかなり高齢なドライバーの割合も高いようで、こちらの期待とは裏腹に軽自動車並みに遅いこともよくある。X1や1シリーズの118iなどは、もはやプリウスカローラクロスのようなファミリーカー(あるいはその上位互換)として選ばれているようで、これらのモデル&グレードにはドイツ車のような振る舞いは期待していない。アルピナや8シリーズなどのハイエンドモデルは、今度は完全に高級車のノリになっていて、ベントレーロールスロイスのように周囲に対して存在感を見せつけるようにノンビリと昼間に走っている。

 

 

 

楽しいクルマを作る

BMWが高級車& 高級ファミリーカー路線にシフトしたことで、従来のBMWらしいヤンチャに走る人々の多くは同じグループのMINIへと移行したようだ。扱いやすいボデーサイズなだけでなく、自分の楽しみたい速度域に応じてエンジンが細かく選べる。1.5L直3ターボDCTのクーパー、2L直4ターボ&DCTのクーパーS、2L直4ターボハイチューン&8ATのジョンクーパーワークスとそれぞれのグレードに良さがある。車のサイズからワインディング向きなので、クーパーが最適解だと主張する人もいる。

 

ワインディングでタイヤに横Gがかかるところに、BMWの2Lターボのトルクがピーキーに出入りすれば、かなり不安定なステアリングは避けられない。しかもホイールベースは2495mmしかなく、GR86(2575mm)のようなスポーツカーよりも遥に短い。路面にもよるけど空転やパワースライドが突発的に起きるエクストリーミングな制御は、まともな感覚のドライバーなら相当に怖い(刺激的)。こんなアバンギャルドなクルマを作られてしまっては、走りが好きなBMWファンはどんどん吸い寄せられる。

 

 

欧州車は偉大だ

ドイツ車というと、メルセデスBMWのように大排気量の縦置きエンジンのイメージが強かった、しかし10年くらい前からだろうか、時代に合わせて排気量を落とし、ターボ化して燃費やCO2排出量なども考えていくうちに、小型ボデーの横置きエンジンが多くのドイツブランドの主力モデルへと置き換わっていった。日本市場では「日本車と変わらない設計のドイツ車は不要」みたいな厳しい意見も根強いけども、実際には夜に楽しく走っているのは横置きドイツ車ばかりだ。

 

三菱やホンダの横置きシャシーを流用したとはいえ、ドイツメーカーがコツコツと10年も改良に取り組んできた結果、ベースとなっている日本メーカー車ではなかなかみられないくらいの路上で楽しいスペックが与えられるようになった。そのままじゃつまらない横置きシャシーに限界近いスペックのエンジンを乗せてキャラを強引に変えている。300ps級のスペックは日本メーカー車ではこの10年ほどはシビックtypeRくらいしか例がなかった。

 

 

トヨタらしさ

ハイチューンのドイツ横置きが日本市場でも人気で、横置きシャシーへの偏見は少なくなったし、むしろFR車よりも走りが痛快であることも認知されてきた。さまざまな欧州ブランドが小型のハイチューンモデルに、ブランドのイメージリーダーを託すようになった。電動ユニットとの相性もよくて、マイルドハイブリッド、PHEVなどへの転用もしやすいようだ。日本のユーザーの動きをしっかりと捉えているトヨタが、GRヤリス、GRカローラ、レクサスLBX・MORIZO・RRと立て続けに発売して横置きドイツ車を後追いしている。

 

ホンダも日本市場にプレリュードを投入すると発表していたり、MAZDAもハイチューンされたロードスターや2.5Lターボエンジン搭載のMAZDA3の発売を示唆するなど、トヨタ以外の日本メーカーにも同様の動きが見られる。エコでバランスの良い横置きシャシーを日本が作り、それを受け継いだドイツが刺激的な走りができるスペックに作り込みマーケティングを主導し、日本勢がそれを真似するという構図になっていることはもはや否定できない。

 

 

 

スポーツカーを残す会

日本メーカーは「尖ったブランディングが苦手」とかよく言われる。バブル崩壊で痛い目に遭って経験から、「作り込んだクルマは、思ったほど売れない」という後ろ向きな言葉を発するだけの役員が仕切ってつまらないクルマを作り続けてきた。そんな停滞気味なトヨタの空気を変えることに、社長時代の豊田章男会長は全力を挙げてきたと公言している。楽しいクルマの作り方がわからないから、スバル、BMWMAZDAにも遠慮なく協力を要請するくらいだから、メルセデスやMINIを模倣するのも理にかなっている。

 

 

60km/h道路で警察に捕まらないくらいの速度で走っていれば、強引に追い抜かしてくるクルマはほとんどない。GRヤリス1台が尋常じゃないスピードで抜けていったけども、真夜中のドイツ車乗りは総じて非常にマナーが良く威圧的な走り方は決してしない。関越道や圏央道など高速道路だと追い越し車線をメチャクチャ飛ばしているドイツ車をみられるが、高規格一般道では信号機もあり、自転車も走っているので、良識ある大人はしっかり区別している。

 

 

暗雲が立ち込める

真夜中の楽しいカーライフを演出する存在になったのだけど、残念ながらメルセデスのAクラスやCLAが間も無く生産を終了し近々廃止になるとのことだ。前述の後追いモデルでトヨタ&レクサスが市場に介入を始め、日本市場だけでなく欧州市場でもGRヤリスが人気だ。一番の理由はAクラスやCLAで使われる全てのエンジンが「ユーロ7」という排ガス規制に対応できないからのようだ。欧州で売れないならば作るインセンティブは無くなる。

 

トヨタはTHSのヤリスに加えて、新型のハイブリッドエンジン(マイルドハイブリッド化)を、ユーロ7に適合させたのだろうか。それとも北米向けなので問題ないという判断なのだろうか。メルセデス、MINI(BMW)が切り開いたホットハッチ市場をトヨタ、ホンダ、MAZDAがハイエナしていく。アイディア不足の日本メーカーだからすぐに行き詰まる予感しかない。トヨタMAZDA・スバル連合にBMWが、日産・ホンダ・三菱連合にメルセデスが参画なんて展開を期待したいが・・・。