MAZDAにも変化の波がやってきた
MAZDA車は昨今の日本メーカーの中では比較的に短い納期で、計画的に購入がしやすい。厳選されたラインナップの魅力を聞き出すお得な限定グレードが次々と登場する。しかし閃いたらすぐに決断しないと手遅れになる。人気沸騰であっても1〜2年の短さで消滅していくことが多い。もっと良いのが出るかもしれないが、日本の2倍売れる欧州市場では乗り味の良い自然吸気エンジンのモデルの販売が難しくなってきていることもあって、モデルの廃止も突然にやってくる。
現行CX-5の前期モデルでは2019年12月から2021年11月のビッグマイナーまでの2年弱の間だけ「スポーツタフスタイル」という限定グレードがあった。ロードバイクの輪行、長距離ツーリング、親を乗せるなど様々な利用シーンが描けたので即決できたが、この限定グレードがなければCX-5とは縁がなかったかもしれない。クルマは好きだけどSUVは不要というユーザーがMAZDAから離れつつあるけども、個人的にはファンが続けられそうだ。
トップ2の廃止
購入候補になりそうなグレードが定期的に登場してくるが、購入計画が整わないうちにグレードが廃止されてしまう。MAZDA6、MAZDA3の1.5L&MT、MAZDA2ディーゼルが生産終了となり、2025年はMAZDA2がスポルトや15MBを含め廃止になると噂されている。スイフトスポーツも今年で廃止が発表されていて、MAZDA2も同じタイミングで終了なのかもしれない。どちらも海外市場での先行きが不透明でメーカーも後継モデルの開発に後手を踏んでしまう状況だ。
メーカーのシビアな経営判断を批判する気は毛頭ないけども、MAZDA2の廃止とCX-5のフルモデルチェンジが同時にやってくるMAZDAは、ブランドの立ち位置が根本的に変わってしまいそうで心配だ。時代と共にクルマ作りの理念やラインナップは移り変わっていくものではある。2002年、2012年のMAZDAは大刷新をすることでメーカーとしての地位を押し上げてきたけれでも、コロナ禍やBEVシフトが背景にある2022年の刷新は、MAZDAにとってさらなる成功へつながるだろうか。
唯一無二
MAZDA2やCX-5は、2012年以降の刷新において強烈な存在感を放った。直近10年の日本市場におけるMAZDAの販売はこの2台が支えてきたと言っても過言ではない。トヨタやホンダのHEVと互角の経済性を発揮したディーゼルモデルが販売の主体となったが、どちらもフロントノーズが長く、前後輪の中間にドライバーを座らせる「中乗り」レイアウトとなり、自然吸気ガソリン&トルコンATを組み合わせる「ロードスター」的な設計は、日本市場ではそれぞれにオンリーワンな存在だ。
「中乗り」レイアウトはBMW、メルセデス、アウディなどドイツブランドが重視する設計である。これらのブランドはしばしばレクサスと比べて後席が狭いと批判される。ドイツ車の設計の美学を理解しない素人ユーチューバー(トヨタ後援?)が氾濫しているためか、それとも自然吸気エンジンが壊滅したことによるものか、ドイツブランドの人気はイマイチだ。結果的にターボエンジンは嫌い、「前乗り」レイアウトも嫌いという、本質的なドライビングの価値を追求するユーザーの多くがMAZDA2とCX-5に集まってきた。
2012年の成功
2012年のブランド刷新は、フォードと決別しMAZDAのエゴでブランドの個性を作りあげるものだった。当時のカーメディアでは「なぜガソリンターボやHEVじゃないのか?」「後席が狭すぎる」「デザイン優先で視界が悪い」といった批判がステレオタイプ化していた。10年以上が経過した今だからこそ、冷静に答え合わせができる。巨大グループから独立した中規模メーカーが、カーメディアのバッシングを跳ね返して、世界の主力市場でしっかりとシェアを確保して生き残った。そして次のフェーズの2022年刷新へと進化を遂げている。
この10年を支えたMAZDA2とCX-5についてカーメディアでも言われている長所は、同クラスの他メーカー車と比較して、内外装のクオリティの高さだろうか。リーマンショック直後の歴史的な円高局面で、メルセデス、BMW、アウディ、ボルボ、VWなど欧州の高いデザインクオリティを持つクルマが、手頃な価格で日本市場に導入され販売を大きく伸ばした。レクサスは円安局面となってから持ち直しているが、円高の影響が続く2012〜2017年頃は冬の時代を迎えていた。この時期に日本導入を検討していたアキュラ(ホンダ)、インフィニティ(日産)は計画を撤回している。
MAZDAが日本車を牽引
VWゴルフ、メルセデスAクラス、アウディA3、ボルボV40がそれぞれ毎月1000台以上売れていた中で、欧州ブランドに対して、意図的に内外装で一歩も引けを取らないクルマを作るようになったMAZDAが、2012年以降に大きく販売を回復したのは必然の結果だったかもしれない。2014年に相次いで登場した現行スカイラインと初代WRXに乗ったが、規格外の加速性能など走りの質は素晴らしいが、従来の日本メーカーらしい内外装のアイディア不足が何とも言えないアンバランスさを醸し出していた。大胆なデザイン刷新を施したメルセデスCクラス(W205・先代)とデビューが同じ年だったこともあり、せっかくの力作もあまり売れなかった。
デザインという主観的な価値観だけで、製品の優劣を定義するのは極力避けたい。2012年以降のMAZDAが市場に問うた価値は、デザインだけでなくクルマの基本設計においても、トヨタの自動車開発にも少なくない影響を与えるようになった。2019年にヴィッツからヤリスに名称を変更してデビューした。従来ならばハイブリッドと廉価版1.0Lガソリンの2本立てがトヨタらしいグレード構成なのだけど、これに新開発の1.5L自然吸気を加えて投入し、MTのグレードも用意され、従来のヴィッツとは異なるユーザー層へアプローチした。1.3から1.5へ排気量が増え、スペックやコスパでかなりMAZDA2を意識した設定となった。
レクサスの変化
2021年にフルモデルチェンジしたレクサスNXでは、従来のドイツブランドを意識した(中国市場を意識した)2Lターボから、新開発の2.5L自然吸気に変更された。絶滅の危機にあった日本市場の2.5L自然吸気はCX-5とMAZDA6くらいしか使われていなかったが、わざわざターボを辞めて排気量を増やして自然吸気に変える処置がなされた。ヤリスやレクサスNXの例を見ても、最先端のトヨタが、「遅れている」と批判されるMAZDAのエンジン設計に寄せるという不可解な動きであるが、カーメディアやトヨタ系ユーチューバーは当然ダンマリである。
エンジンの魅力的なアップデートがされたレクサスNXは、発売と当時にたくさんの受注を獲得したようで、街中でも見かけることが多い。せっかくスポーティでパワーアップした自然吸気エンジンが搭載されたのだけど、基本lの骨格はトヨタの汎用Kプラットフォームを、ホイールベースそのままに使っているため、ハリアーやRAV4と同じく「前乗り」のままだ。前輪と降臨の中間よりもやや前よりにドライバーズシートが配されているのが、周囲から見ると一目瞭然だ。
ドイツ車と日本車とMAZDA
メルセデス、BMW、アウディのミドルクラスSUVで、前乗り姿勢が目立つクルマは存在しない。日本車とドイツ車において完全に主体となったミドルSUVだけども、トヨタ、レクサス、ホンダ、スバル、日産、三菱、VW、プジョー、シトロエンなど、SUVのデザインがバズらないブランドのミドルSUVには「前乗り」という共通の難点がある。外観はSUVでも、中身はフロントキャブのピープルムーバーなので、見た目に違和感があるし、隘路を走ればSUV特有のロール、ピッチだけでなくヨー方向にも必要以上に揺さぶられる。
メーカー側もすでに気が付いているようで、ヤリスクロスをホイールベースそのままに「前乗り」着座を後に寄せて「中乗り」としたレクサスLBXがすでに発売されている。トヨタはヤリスクロスよりもLBXは着座位置を低くしたと説明しているが、そのまま下がると足元空間に余裕がなくなるため、ドイライバーズシートは高さだけでなく、位置も後よりになっている。LBXのスタイリングがヤリスクロスよりもCX-3に近いと感じるのは、外装デザインや塗装だけでなく、着座位置の修正によって、周囲からの見た目が大きく変わったことが大きい。
⭐︎字数がかなり多くなってしまったので、次回に続きを書きます。