性能&デザインで選ぶ時代
2014年にはゴルフ7の大ヒットもあって、日本市場で6万7000台余りを販売したフォルクスワーゲンだけど、2024年は2万2000台まで落ち込んでしまった。マクロな理由は価格高騰で、VWに限らずトヨタでもプリウス、アルファード、クラウンなど価格上昇が顕著なモデルの販売は同時期で同じくらいの割合で順調に減っている。しかし以前から高価格で富裕層を顧客に持つブランド(メルセデス、アウディ、BMW)は大きく下がってはいないので、輸入ブランドではVWの苦戦が目立ってしまう。
2025年の輸入車販売台数は、1位MINI(383万円〜)、2位ゴルフ(355万円〜)、3位T-Cross(336万円〜)となっていてVW車の競争力が低いわけではない。VWブランド全体でも2025年は3万台まで回復した。乗り出し400万円くらいであれば、日本車とも互角の価格勝負ができる展開になってきた。カローラスポーツの中間グレードならば、乗り出しは300万円台前半だが、カローラシリーズ共通のダッシュボードデザインがイマイチだと感じる人は50万円上乗せして輸入車へ行くだろう。
T-ROCの難しさ
ハリアー、クラウン、レクサスRXなどのミドルSUVだと、リセールが強過ぎて輸入車との間で「経費」格差が生まれてしまうが、街中に溢れるカローラスポーツやヤリスクロスとの比較ならば、トヨタ車より高い分の50〜100万円がリセールで返ってくる可能性が高い。輸入車のリセールは読めない部分があるが、カネ持ってる東京都多摩地区の様子を見ていると、いろいろな世代の小型輸入車が多くて手堅く売れそうだ。MINI、ゴルフ、T-Crossの輸入車上位3台は、トヨタとの競合で比較的に戦いやすいポジションだと言える。
VWのT-ROC(乗り出し470万円)にとっても、対峙するのがカローラクロス(350万円)だけだったら、120万円差を跳ね返して価値を見出してくれるユーザーがもっと出てくると思うが、このクラスにはホンダ・ヴェゼルという強力なライバルもいて、トヨタとホンダのエース同士で競合してしまう。新車購入で3軒目まで商談に来る元気と時間のある人はそんなに多くはない。
ライバル多過ぎ問題
VWのT-ROCと競合する、日産キックス(340万円)、MAZDA・CX-30(340万円)、スバル・クロストレック(420万円)、MINIカントリーマン(540万円)など3軒目候補は、囲い込んできたファンによる「指名買い」に支えられた息の長いビジネスをしている。2025年には新たにアルファロメオ・ジュニア(460万円)や、レクサスLBX・MIRIZO・RR(690万円)が参入してきた。ブランド力のあるコンパクトSUV市場は盛り上げってきている。
インポーターや熱心なユーザーからしてみたら、VWはトヨタやホンダと比べるクルマじゃないよ!!が本音だろう。わざわざ高いカネ払って輸入車を選んでいるのは理由が当然ある。10年くらい前だと、ブログ上で日本車と輸入車を比較しようものならアンチコメントがたくさんやってきたものだ。当時の私は輸入車至上主義のヤバいコメントに「メルセデスは三菱の、BMWは日産の、MINIはホンダの、VWはMAZDAのパクリだろ!!」とガチレスしていたが、この10年で日本メーカーの評価はだいぶ上がってきた(彼らの教祖・福野礼一郎さんがMAZDAの完成度に敬意を払うようになった)。
こだわり設計の魅力
カローラクロスやヴェゼルは、ベース車よりもボディを大きく拡大して車格を上に見せる設計だ。主に中国市場を意識した設計である。一方で中国市場向けに拡大ボデーを用意し、欧州や日本では、シャシーが異なるT-Crossと同じサイズ感で仕立てたT-ROCは、開発のコンセプトが真逆と言っていい。ドライバーズカーのサイズ感と、SUVの居住性、ゴルフ譲りの高速道路性能(200km/h対応クルコン)や、Rの300ps級エンジンに対応するシャシー性能に対して、本体価格430万円以上の価値を見出している。
ヴェゼルに「K20C」(シビックtypeR用)や、カローラクロスに「G16E-GTS」(GRカローラ用)を載せるグレードは登場していない。2025年には「カローラクロスGRスポーツ」と「ヴェゼルRS」がどちらも本体価格400万円(乗り出し440万円)くらいで設定された。コスパ重視のノーマルのカローラクロスやヴェゼルでは、免許を取得したばかりの若いユーザーも多く、そのユーザー層とは差別化を図りたい年配のユーザーの受け皿がVWだったのだが、その需要を取りにきた。車種を絞っている日本メーカーではこの手法が今後も多くなりそうだ。
基本設計が「走り」
ミドルSUV(ハリアーやZR-V)のように使えて、かなり手頃な価格に抑えられることで人気のカローラクロス、ヴェゼルに、無理やりに「スポーツグレード」を作って記号的価値をゴリ推しするマーケティングには疑問を感じる。ベース車の基本設計から「走り」や「スポーツ」をしっかり盛り込んでいるドイツメーカーの「Rライン」や「Mスポーツ」とは違って、ベース車は居住性やエコをテーマに開発しておきながら、グレード名と専用パーツで所有満足度を上げるのは、ちょっと違うのではないか!?(あくまで個人の感想)
VWのミドルSUVであるティグアンと同じ設計を使って、ゴルフのクロスオーバー版として作られたT-ROCは、ティグアンより軽快に走れて、ゴルフよりもゆったり乗れるクルマ好きの新しいニーズを捉えたコンセプトを持っている。カローラクロスやヴェゼルでは起こりにくいと思うが、T-ROCを買いに来た客がそれほど価格が変わらないティグアンを選んでしまうなんてことも起こる。MAZDAのCX-30でも、これまでCX-5に客が取られていたらしい。T-ROCやCX-30はブランド内で多く販売台数が出せない立ち位置にあった。
ユーザーが未来を創る
クルマを語る上で厄介なことなんだけど、「走り」の良し悪しに説得力がある固有パラメータはない。T-ROCやCX-30の「走り」が、ヴェゼルやカローラクロスに対してどれだけの優位性を持つか確かめるために試乗しても「違い」こそ感じるものの単純に「優位」とはならない。結局のところ、VWやMAZDAの歴代モデルが好きだった人の尺度で「乗り味」を見聞すると、当たり前ではあるがT-ROCやCX-30が心地良く感じる。ヴェゼルやカローラクロスもよく出来ているけども、VWやMAZDAに慣れてしまった人には異質な走りに感じてしまう。
数年前に島下泰久さんが「自動運転になったらBMWやMAZDAを指名買いする人はいなくなる」と書いていた(ハッキリとMAZDAを指名!!)。自動運転になったらシェアカーと無人タクシーの境目がなくなって、高級車も普通車も全てレンタルになり、レクサスやメルセデスは配車サービスの会社になると思う。フェラーリは顧客に支えられて残る。BMW、MAZDA、ポルシェ、アルファロメオ、そしてVWは「スポーツカー・ブランド」として生き残るかもしれない。
無慈悲
実家の家族など「走り」に興味がない人は、トヨタ、BYD、テスラが生産効率を極大化して最も快適かつ安全で最も経済的な「自動運転」のクルマを供給すればいいと思っている。MAZDAに「HEV使え!!」と言うライターやヤフコメの連中も同じような思考なんだと思う。T-ROCやCX-30のようにトヨタ、ホンダが日本で売るモデルとは全く違うアプローチのクルマには、開発者の独創性を感じる。メインストリームのクルマを高い維持費を払って所有したいとは思わないが、MAZDAやVWのようなメーカーが懐の深さを見せてくれる限りは買うと思う。
多くの人が予測するように近い将来に、HEVとBEVだけが販売される時代がやってくる。そこにはMAZDAの自然吸気&トルコンAT / 6MTも、VWの48Vターボ&DCTも消滅している。MAZDAの自社計画によると自然吸気(非電動)の期限は2030年らしい。あと5年足らずでロードスターとMAZDA2の現行ユニットは消滅する。15MBは19km/Lくらい走ってとっても燃費が良いけど何が悪いの!?あらゆるモデルがフルハイブリッドもしくは48V化されるとMAZDAはレクサスやVWみたいな価格帯になってしまう(それでも買うけど)。
後記
最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年2月4日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 車メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。
cardrivegogo-diary.blogspot.com