自動車産業の現在地
日本では2025年になっても相変わらず自動車メーカーが経団連で威張っている。一方でアメリカでは自動車産業はすっかりオワコンで、大統領にトランプを再指名して積極的な自動車・鉄鋼の保護貿易を展開するようになった。アメリカ東部は金融業、西部はITがそれぞれ集積していて、順調に経済成長している中で、自動車産業が分布する中央部はアメリカのお荷物(ラストベルト)と言われている。MLB(大リーグ)のチームも東地区と西地区にしか強豪チームはいない。
トランプの積極関税によって、日本の自動車メーカーの株価が大きく下落している。北米向け輸出がいまだに多くて、消費税の還付金で潤っていると批判されているトヨタ、MAZDA、スバルは、日本政府がアテにならないのでロビー活動を展開する。一方でホンダや日産の北米需要はほとんどが現地生産に切り替わっていて、北米主体のホンダの影響はかなり限定的だ。メキシコ工場の生産車種は北米での主力モデルではなく、カナダの新BEV工場の稼働はトランプが退役する2028年に予定されている。
逆境からのリバイバル始まる!?
構造改革の進んでいるホンダや日産では、すでに日本市場での販売モデルも厳選されていて、ユーザー側から「やる気がない」と酷評されてたりする。しかし今後はトヨタ、MAZDA、スバルも同様に日本向け車種の絞り込みに着手することになりそうだ。トランプ関税によるメーカー受難は、決して悪い事ばかりではない。トヨタやMAZDAはバブル崩壊後の2000年代と、リーマンショック後の2010年代に経営危機を迎え、車両開発の熱量が一時的に上がった過去がある。
2000年代初頭にはゼロクラウン、アテンザ、2010年代はGR86、CX-5が大ヒットしている。デビューとともに北米市場でのMAZDAを牽引した初代CX-5の大ヒットを受けて、トランプが初当選を果たし、再びCX-90が想定を大きく超えるヒットをするや、再当選してしまった。CX-5もCX-90も全量が日本からの輸出である。アメリカの自動車産業を最もコケにしているのは、どうやらMAZDAのようだ。今でもMAZDAがフォード傘下のままならトランプ大統領は生まれていなかったかもしれない。
生き残るジャンル
新たな貿易摩擦による危機を迎えて、自動車メーカーにはさらなる精進が期待される。バブル期にどのメーカーも車種が大きく増えて、ブランド内のヒエラルキーを人生のステージとともに登っていく買い方はすでに過去のものになった。バブル崩壊後には「最初のクルマが一番高級」なんて悲哀に満ちたカーライフが一般的に広がるようになり、クルマに夢を抱く人は激減した。
最大手のトヨタであっても、日本専売モデルはかなり減っていて車種の整理は、すでにかなり進んでいる。どのメーカーもラインアップしやすいのは、世界のどこでも売ることができる「ミドルSUV」と「コンパクトSUV」の2つである。2サイズのSUVに加えて、ブランドのイメージを牽引する「スポーツカー」と「高級車」の4タイプが普通乗用車ブランドにおけるラインナップの基本になりつつある。
カローラもMAZDA3も消える!?
トヨタはハリアー、RAV4、カローラクロス(ミドルSUV)、ヤリスクロス、ライズ(コンパクトSUV)、GR86、GRヤリス(スポーツカー)、クラウン、アルファード、ランクル(高級車)という区分になる。価格破壊レベルでリーズナブルにセダン、ワゴン、ハッチバックを提供している現行カローラのシリーズであっても、クルマ離れの流れを変えるには至っておらず、プリウスも含め次期モデルは無くなる可能性が高い。
MAZDAではCX-5(ミドルSUV)、CX-30、CX-3(コンパクトSUV)、ロードスター(スポーツカー)、CX-60、CX-80(高級車)となる。CX-5のフルモデルチェンジと、MAZDA2の廃止が予想されている。前後輪のちょうど中間に着座するセンター・ドライブ・ポジションで多くの指名買いを呼び込み、日本市場を支えてきた2大車種を同時に改廃するのは、ちょっとリスクが高いように思うが・・・。
レヴォーグとフィットも消える!?
スバルはフォレスター(ミドルSUV)、クロストレック(コンパクトSUV)、WRX、BRZ(スポーツカー)、アウトバック(高級車)となる。この枠組みから外れるインプレッサやレヴォーグの次期モデルは不透明だ。ベンツやBMWのワゴンは、もはや日本くらいしか売れないらしいが、レヴォーグ(高級車?)はこのニーズをうまく吸収している。利益率世界トップのスバルは、高価格化が進んでいるけども、インプレッサは手頃な価格の入門車として現行でも残っている。
ホンダはZR-V(ミドルSUV)、ヴェゼル、WR-V(コンパクトSUV)、シビックtypeR、プレリュード(スポーツカー)、アコード(高級車)となる。フィット、フリード、ステップワゴンよりもZR-Vの方がラインナップに残りやすいと言える。フィットもシビックのようにMT仕様を復活させてスポーツカー枠で生き残るしかないかもしれない。スポーツカー寄りのBEVであるホンダeの販売促進のために一時的にフィットのMTを廃止したのかもしれない。
ラインナップが不足!?
日産はエクストレイル(ミドルSUV)、キックス(コンパクトSUV)、フェアレディZ、GT-R(スポーツカー)、スカイライン(高級車)という基本構造を持っているが、ePOWER専用だったり、モデルサイクルが異常に長かったりで、日産車に乗ってみたい!!という潜在的ユーザー候補に高いハードルを提示し続けてきた。セレナやノートはグローバルでの日産の競争力を感じるには魅力が乏しい。
三菱は現状では、アウトランダー(ミドルSUV)、デリカD5、トライトン(高級車)だけの展開になっている。コンパクトSUVの代わりとしてデザイン面で反響が大きかったデリカミニが人気を博している。ASEAN地域では2023年からエクスフォース(1.5LのNAでCVT)というコンパクトSUV(が販売されていて、トライトンと同じく逆輸入で導入されるかもしれない。スポーツカーの枠はルノーOEMのコルトをベースにしたラリーアートが誕生する可能性があるくらいだろうか。
魑魅魍魎が跋扈する・・・
どのメーカーも、この4ジャンルに絞って、今後の新車展開を行う路線は変わらないだろう。厳しい経営環境で、値上げをすれば客は離れる。プリウス、カローラ、シビック、MAZDA3、レヴォーグなどのロードカーは、SUV化(カローラクロス、CX-30)するか、スポーツカー(シビック、MAZDA3、カローラ。プリウス)、高級車(レヴォーグ)へと再分類されるように強烈に進化するしかない。
かつてホンダはフェラーリを名指しして「イタリアンスーパーカーの時代は終わった!!」と挑発して世界に大きな変革を巻き起こした。同じようにフェラーリやアストンマーティンに匹敵するようなストイックなシビック、MAZDA3、カローラ、プリウスを仕立ててしまうかもしれない。同じくマセラティやベントレーと比較されそうなレヴォーグ、MAZDA6ならば全てを変えるだろう。トランプ関税の副産物はそんな驚きに満ち溢れたプロダクトではないかと楽観的な期待をしている。