貴族ブランド化!?
2015年から販売されているMAZDA・CX-3の日本向け生産が2026年2月で終了することが発表されてしまった。モデルサイクルが10年を越えただけでなく、EVシフトだけでなくコロナ禍を越えた猛烈なコストプッシュインフレに見舞われて自動車産業をめぐる販売環境が激変している。CX-3とMAZDA2撤退後のMAZDAは、日本市場において客単価が一気に上がることが予想されユーザーとしては気が重い(新型CX-5の価格は朗報!?)。
CX-3が販売されていた期間に、MAZDAは大きくブランド力を上げた。CX-3を含むリーマンショック後に開発されたモデルは、電動化やBEVに変わりゆく自動車産業の中で、クルマ好きにある種のノスタルジーを与える存在でもあった。トヨタ、ホンダの燃費及びユーティリティの飽くなき追求とは異なり、MAZDAの「癒されるクルマ」は、ペットに近い感じがする。ただし「飼うなら責任を持て」とばかりにユーザーに自覚を促すようなクルマ作りをしている。
趣味以外の何ものでもない
10年以上前のデザインながら、CX-3のエクステリアには普遍的な美が表現されていて、壊れるまでずっと所有していても不満はないだろう。しかしその美しさの代償として、ディーラーのメンテナンスパックで半年に一度点検する度に、高級エンジンオイル(3000kmごと)と6000円のプレミアム洗車が欠かせなくなる。目立つ傷が付いたらそのままにして置けないので、ディーラーの言い値で修復する。
毎朝、髪型を整えて、スキンケアをして、仕立ての良いスーツ、靴、鞄を身につけて出社する「仮面社会」を生きる都会のサラリーマンにとっては、MAZDA車のメンテナンス費用は身だしなみの一部であり、ある程度は納得して捻出するんじゃないかと思う。言うまでもないけど見た目を整えることはとてもコスパがいい。初対面の客や取引先に余計な心配をさせない格好を仕込んでおくことで、仕事の難易度は下がる。どこかへ出かけるためのクルマも小綺麗に整えておかないと費用対効果が割に合わない。
ストレスフリー
MAZDAはクルマ好きのためのブランドだとされているが、実際には「他人の目など気にしない」「クルマはなんでもいい」という人ほど、MAZDA車との相性は良いと思う。その中でもCX-3は、価格はそこまで高くなく、小型でどんな環境でも乗りやすい。逆説的かもしれないが他人の目を気にしないとは、不必要に見下されないようにすることだ。デザインが古臭くなくメンテナンスを怠らなければ小綺麗に乗れる。他人の目を気にする人はMINIや小型のメルセデスなどを選ぶだろうけど。
身だしなみがだらしないのに、他人にやたら干渉してくるオッサン(オマエが人生を語るな!!)が、若い頃はあちこちに居たけど、世代交代が進むにつれて確実に減ってきている。小綺麗なMAZDA車に乗って、服装や身だしなみをしっかり整えて堂々としていれば、変な人は近寄って来なくなるからとても快適だ。男性にとっては、パートナー、母親、姉妹など身近な女性との軋轢はしばしばストレスになるので、身だしなみを整えるだけで回避できるなら安上がりだ。
等身大の安心感
多くのMAZDAユーザーの人生を良いものに変えてきたであろう、ブランドの中核となるCX-3、CX-5(二代目)、MAZDA2、NDロードスター(四代目)が終焉の時を迎えている。いわゆる「第六世代」と呼ばれる秀逸なモデル群だ。これに続く「第七世代」のMAZDA3、CX-30、CX-60、CX-80もMAZDAクオリティに相応しい挑戦的なクルマづくりが光るのだけど、ターゲットが露骨に北米市場に変わったこともあって、個人的には衝動買いを引き起こすような手応えは感じなかった。
2012年にGHアテンザ、2020年にCX-5、2025年にMAZDA2を買った。3台ともに「今買わないと絶対に後悔する!!」という強迫観念に襲われていた。それくらいのインパクトがないと「投資」をする気にはならない。その暗示のせいもあるだろうけど、所有満足度は3台ともに甲乙つけ難いくらい高い。現行の「第七世代」は2027年くらいで終了する予定で、その後の「第八世代」でそれなりの「貴族」価格になったBEV中心のMAZDA車を衝動買いする日が来るだろうか・・・。
ユーザーを動かすもの
MAZDAだけが特別なわけではなくて、日産、ホンダ、スバル、三菱、VW、BMWにもそんな黄金時代はあった。30年前の三菱ではディアマンテ、ランエボ、GTO、FTO、エクリプス・スパイダーが同時に存在したが、現行モデルには何一つ面影が残っていない。当時は280万円あればランエボやギャランAMGが買えたが、今では280万円はデリカミニの価格帯となっている。三菱ファンはもはや嘆く時期をとっくに越えているだろうが・・・。
実際に「第六世代」のMAZDA車は売れていた。MAZDA内ではCX-5、MAZDA2、ロードスターが2025年においても上位を占めている。タイからの計画輸入を行うCX-3は台数こそ伸ばせないが、予定通りには売れ続けた。この4台を引っ張ったため、後に続く「第七世代」の販売が反動を受けたという分析もできるだろう。ロードスター以外の3台が年内で廃止され、新型CX-5も少なからず価格上昇で苦しみそうなので、決して商品力は低くないMAZDA3、CX-30、そしてMX-30の販売もある程度は増えるだろう。
混迷するBセグ市場
欧州テイストを「第七世代」に無理矢理求めるとするならば、一番マイナーなMX-30の個性的なスタイリングが刺さる。欧州市場向けのロータリーREEVは、「第八世代」以降の主力電動ユニットに挙げられている。しかしCX-3、MAZDA2が一時的であれラインナップ落ちしてしまうと、経済性・乗りやすさ・スポーティ・コンパクトな美学を併せ持つBセグの良さを知ってしまっているMAZDAユーザーは、スイフト(MTあり)やフィットRSなどに目移りしてしまうかもしれない。
利益率で頭がいっぱいのメーカー側は、北米に投入されないBセグの開発に後ろ向きだ。MAZDA幹部のインタビューでもリーマンショック頃(2008年)の「98万円特価でのデミオ販売」の過去はトラウマとなっているらしい。自動車が抱える外部不経済は、EVシフトで解決されるわけではないけども、わかりやすい付加価値の追求として、「BセグはBEV、Cセグ以上はPHEV」という欧州メーカーの路線をMAZDAも踏襲していた。
BMW、レクサス、アルファロメオと闘え!!
完全BEV化を発表していたフィアット500やMINIが、相次いで新型のBEV設計モデルに後付けでICEモデルを追加した。LBXはHEVとICEのみで、ジュニアも日本では完全にMHEVが販売の主体でインポーターの想定以上の販売を見せている。一方でMINIに関しては、BEVを毎日のように見かけるので、日本市場で独特の市場を獲得しているようだ。メーカーの消耗を考えるとBセグを取り巻く環境は値上げ仕方なしで、デザイン・品質の勝負になりつつある。
2017年にトヨタの会長(当時社長)に「MAZDAを手本にします!!」と言わせるほどの珠玉の第六世代の一斉退役は、トランプ関税以上の影響を与えるだろう。しかしショックが強烈であればあるほどMAZDAはそれをバネに、徹底的に考え抜いたクルマ作りでそれを乗り越えてくれると思う。次世代Bセグが乗り出し400万円近くであっても、MAZDAにはMINI、LBX、ジュニアを超えるブランド力が備わっていると思うので、十分に勝算はあると思うのだが・・・。
後記
最後までお読みいただきありがとうございます。この投稿は2026年3月19日時点での情報をもとに記述しています。今後とも日本市場で展開する 自動車 車メーカーについて思うところを綴っていきたいと思います。